MapLibre GL JS アップデート情報: バージョン1.0から5.0までの進化

ご注意

1. はじめに

MapLibre GL JSは、ウェブサイトやWebViewベースのアプリケーションで地図を公開するために設計された、オープンソースのTypeScriptライブラリです 1。GPUアクセラレーションによるベクタータイルレンダリングを活用することで、高いパフォーマンスを実現しています 1。本レポートは、MapLibre GL JSのバージョン1.0から5.0までの主要なアップデートに焦点を当て、各メジャーバージョンおよび特筆すべきマイナーバージョンにおける変更点と新機能の追加を詳細にまとめるものです。この情報は、開発者がライブラリの進化を理解し、アップグレードや機能利用の計画を策定する上で不可欠な指針を提供します。

MapLibre GL JSの主要なバージョンごとの概要を以下の表に示します。

バージョン	主要リリース時期	主な焦点/テーマ	特筆すべき新機能/変更点	破壊的変更の有無
v1.x	2020年12月	フォークと互換性維持	Mapbox GL JS 1.13からのフォーク、アクセシビリティ改善、line-gradient精度向上、raster-demサポート 2	なし
v2.x	2021年後期	TypeScript移行とTerrain3D	TypeScriptへの全面移行、Mapbox固有コードの削除、3D地形（Terrain3D）機能の導入、パフォーマンス最適化 5	あり
v3.x	2023年5月	WebGL2と3D強化	WebGL2の本格採用、3D地形レンダリングの強化、カメラ制御とアニメーションの改善、広範なパフォーマンス向上 7	あり
v4.x	2024年2月	API近代化と基盤強化	JavaScriptコールバックからPromisesへの移行、UIコンポーネント分離の議論、Microsoftのスポンサーシップ 9	あり
v5.x	2025年1月	グローブビューと最新機能追加	没入型グローブレンダリングモードの導入、COG（Cloud Optimized GeoTIFF）サポート、SDFスプライト機能の強化、Web UIフレームワークの基盤構築 12	あり

2. MapLibre GL JSの歴史と背景

Mapbox GL JSからのフォークとその意義

MapLibre GL JSの誕生は、2020年12月にMapbox GL JSがオープンソースライセンスから非オープンソースライセンスへと変更されたことに端を発します 2。このライセンス変更は、Mapbox GL JSを利用していた多くの開発者や企業にとって、既存のプロジェクトの継続性に対する大きな懸念をもたらしました。MapLibre GL JSは、Mapbox GL JSのオープンソース版（1.x）のコードベースを維持し、コミュニティ主導で開発を継続するための不可欠な動きとして立ち上げられました。この決定は、単なる技術的な選択に留まらず、オープンソースエコシステム全体の健全性と、開発者が特定のベンダーに依存せずにマッピング技術を利用できる自由を守るための戦略的な必然性がありました。

初期の目標とコミュニティ主導の開発

MapLibre GL JSの初期バージョン（1.x）は、Mapboxのオープンソースバージョン（1.x）のドロップインリプレイスメントとして機能し、さらに追加機能を提供することを意図していました 2。Mapboxのライセンス変更後、複数の独立したフォークプロジェクトが立ち上がりましたが、コミュニティは断片化を避けるためにこれらの初期フォークの努力を結集し、「一つのプロジェクト」として協力する道を選びました 2。この統合は、プロジェクトの持続可能性と独立性を確保する上で極めて重要でした 16。MapLibreプロジェクトは、Mapboxのライセンス変更という危機的状況に対し、コミュニティが強い結束と共通のビジョンを持って対応した結果として誕生しました。この共同作業とオープンなガバナンスモデルが、その後のMapLibreの着実な成長と安定した開発の強固な基盤を築き上げました。

3. MapLibre GL JS v1.x: 初期バージョンとMapbox GL JSからのフォーク

MapLibre GL JSは、Mapbox GL JS 1.13のフォークとして2020年12月にその歴史を開始しました 2。この初期の段階では、既存のMapbox GL JSユーザーが容易に移行できるよう、Mapboxのオープンソースバージョン1.xとの高い互換性が維持されることが設計上の最優先事項でした 2。

フォーク直後から、MapLibre GL JSは単なる互換性の維持に留まらず、機能の強化と既存の課題解決にも積極的に取り組みました。MapLibre GL JS 1.13.0の変更ログには、Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.1で報告されたアクセシビリティ問題の修正、ポップアップを開いた際のフォーカス動作の改善、line-gradientの描画精度の向上、そしてraster-demソースにおけるmaxzoomオプションとオーバーズーミングのサポート改善といった項目が含まれていました 4。これらの初期の取り組みは、プロジェクトが単にMapboxのコードを「維持」するだけでなく、ユーザーエクスペリエンスの向上とソフトウェア品質の確保を重視していたことを明確に示しています。このような品質とアクセシビリティへの初期投資は、新しいオープンソースプロジェクトが開発者の信頼を獲得し、そのユーザーベースを拡大するために不可欠な要素であり、MapLibreの長期的な成功の礎となりました。

4. MapLibre GL JS v2.x: 主要な改善と新機能

MapLibre GL JSのv2.xは、プロジェクトがMapboxの出自から完全に独立し、独自の技術的アイデンティティを確立するための重要な転換点となりました。

TypeScriptへの移行とAPIの変更

v2.0.0では、プロダクションコードが全面的にTypeScriptに移行されました 5。この移行は、コードの堅牢性、保守性、および開発効率を大幅に向上させることを目的としていました。TypeScript化に伴い、

accessTokenやmapbox://で始まるMapbox固有のURLに関連するコード、テレメトリー（遠隔測定）、トラッキングコード、そしてbaseApiUrlがコードベースから削除されました 5。これにより、MapLibreはMapboxへの依存を完全に断ち切り、よりクリーンで独立したコードベースを構築する道を開きました。さらに、TypeScriptの型定義も大きく変更され、例えば

StyleはStyleSpecificationに、MapboxEventはMapLibreEventにそれぞれ名称が変更されました 5。これらの変更は、MapLibreがフォークという出自から脱却し、独自の道を歩むという強い意思の表れであり、将来的な依存関係のリスクを低減し、より健全で保守性の高いソフトウェア開発を可能にしました。

Terrain3Dサポートの導入

v2.2.0では、3D地形（Terrain3D）機能が追加されたことが特筆されます 6。この機能は、マップの視覚的な表現力を飛躍的に向上させ、よりリアルで没入感のある地図体験を提供します。v2.2.0のリリースでは、3D地形機能の追加に加えて、

icon-paddingが非対称パディングをサポートするように更新 (#1289) されたり、意図しないスクロールやパンを防ぐためのcooperativeGesturesオプションが追加 (#234) されたり、Node.js 18の内部サポートが追加 (#1431) されたりといった、様々な機能改善が実施されました 6。また、3D地形が有効な場合に最も近いタイルが消失する問題 (#1241, #1300) や、

maxBoundsが経度±180°の子午線を横断する場合のハンドリング (#1298, #1299) といった重要なバグ修正も行われました 6。Terrain3Dの導入は、単なる2Dマップレンダリングから、よりリッチで没入感のある3Dマッピング体験への移行の始まりを示しており、これはMapLibreがMapboxの先進的な機能に追いつき、それを超えようとする意欲の表れでもありました。

パフォーマンスとレンダリングの最適化

v2.xでは、式タイプの改善、プリミティブサイズ選択のパフォーマンス向上、エラーハンドリングの改善など、様々なパフォーマンス最適化が図られました 6。また、

getImage関数がcreateImageBitmapをサポートするようになり、画像処理の効率が向上しました 5。これらの最適化は、MapLibreが単なる機能追加だけでなく、実際のアプリケーションにおけるユーザー体験の向上にも継続的に注力していることを示しています。

その他の注目すべき機能と改善

v2.xでは、その他にも多くの改善が加えられました。例えば、マップにredraw関数が追加され (#206)、マップの再描画をプログラムで制御できるようになりました 5。また、帰属コントロールのアクセシビリティが向上し (#359)、

maxPitchの値が85度まで許可されるようになりました 5。さらに、Deck.glとの統合が改善され、ベースマップに地形が含まれる場合のカメラ同期がよりスムーズになりました 20。Deck.glのGlobeViewもMapLibreをサポートし、より高度な可視化レイヤーとの連携が可能になりました 20。ビューには焦点オフセットのためのパディングオプションが追加され、多くの非表示レイヤーがある場合のパフォーマンスが向上し、TileLayerを使用する際のピッキングパフォーマンスも改善されました 20。X軸とY軸のズームを個別に制御できるようになるなど、より柔軟なマップ操作が実現されました 20。

5. MapLibre GL JS v3.x: 3D機能とパフォーマンスの進化

MapLibre GL JS v3.xは、3Dレンダリング能力と全体的なパフォーマンスをさらに進化させることに重点を置いた、重要なマイルストーンとなりました。

WebGL2の本格的な採用

v3.0.0は、WebGL2のフルサポートを導入しました 7。これは、MapLibre GL JSがより高度なグラフィックス機能とパフォーマンス最適化を利用できるようになるための決定的な一歩でした。WebGL2への移行は、MapLibre GL JSがDeck.glのようなエコシステム内の他のライブラリとの連携における摩擦を解消し、より広範なWebGL2ベースのツールとのシームレスな統合を可能にしました 7。この技術的進化は、MapLibreがより高度なグラフィックスパイプラインを活用し、3Dレンダリングの品質と効率を飛躍的に向上させるための基盤を固めたことを意味します。

v3.0.0-pre.0のプレリリース版では、3Dレンダリング用のRenderPoolの追加 (#1671)、map.getCameraTargetElevation()の追加 (#1558)、3Dでのスムーズなカメラ移動を可能にするAnimationOptionsへのfreezeElevationの追加 (#1514, #1492) といった新機能が導入されました 6。また、非推奨のMapbox GL CSSクラスの削除 (#1575)、海面下の領域のレンダリング改善と

elevationOffsetワークアラウンドの削除 (#1578)、地形オブジェクトをstyle.terrainからmap.terrainへ移動 (#1628) といった破壊的変更も含まれていました 6。

3D地形とオブジェクトレンダリングの強化

v3.xでは、Terrain3D機能がさらに安定し、改善されました 7。

queryTerrainElevationメソッドにより、特定地点の地形標高をメートル単位で正確に取得できるようになり (#2264)、開発者はよりインタラクティブでデータ駆動型の3Dマッピングアプリケーションを構築できるようになりました 7。また、海面下の領域のレンダリングが改善され、3D建物パーツの重なりが修正されるなど、3Dシーンの視覚的忠実性が向上しました 7。

カメラ制御とアニメーションの改善

transformCameraUpdateという新しい機能が追加されたことで、マップのビューポートが変更される際にカメラ変換に直接アクセスし、継続的に操作することが可能になりました 7。これは、複数のマップの同期（例: メインマップとミニマップ）や、リアクティブフレームワークでのカメラ状態管理を容易にする強力なフックを提供します。

パフォーマンスのさらなる向上

v3.xでは、広範なパフォーマンス改善が実施されました 7。これには、デフォルトスタイルプロパティのオンデマンドでの遅延ロードによる初期読み込みパフォーマンスとメモリ使用量の改善 (#2476)、スタイルレイヤーをワーカーに送信して並列処理を可能にすることによるパフォーマンス向上 (#2131)、

validateStyle MapOptionの追加による本番環境でのスタイル検証の無効化（高速化のため） (#2390)、マップ移動中の画像リクエストキューのスロットリング (#2097)、KDBushとsuperclusterの更新によるメモリ効率の向上 (#2522) などが含まれます。これらの継続的なパフォーマンス改善への取り組みは、MapLibreが単なる機能追加だけでなく、実際のアプリケーションでのユーザー体験を重視していることを明確に示しています。

6. MapLibre GL JS v4.x: APIの近代化と基盤の強化

MapLibre GL JS v4.xは、APIの近代化とプロジェクトの基盤強化に焦点を当てたバージョンです。

JavaScriptコールバックからPromisesへの移行

v4.xにおける最も重要な変更点の一つは、一部のパブリックAPIで従来のJavaScriptコールバックをPromisesに置き換えることでした 9。これは、現代のJavaScript開発における非同期処理のベストプラクティスに合わせ、コードの可読性と保守性を向上させることを目的とした破壊的変更です。この移行は、開発者がMapLibre GL JSをより現代的なJavaScriptエコシステムに統合しやすくするための重要なステップであり、開発者の生産性を向上させる効果が期待されます。

UIコンポーネントの分離とバンドルサイズの最適化

v4.xの開発過程では、すべてのUIコンポーネント（ズームコントロール、位置情報コントロールなど）をメインパッケージから分離し、バンドルサイズを削減するとともに、Webコンポーネントライブラリとして独立させるという議論が活発に行われました 10。このアプローチは、開発者がアプリケーションに必要なコンポーネントのみをツリーシェイクできるようにすることで、最終的なバンドルサイズを最適化し、より柔軟な開発を可能にすることを目指しています。これは、MapLibreがよりモジュラーで柔軟なアーキテクチャへと進化していることを示しています。

その他の重要な変更点

v4.xでは、geometry-typeに関する議論が行われ、コミュニティからのさらなるフィードバックが求められました 11。また、Sergei BachininがMapLibre GL JSのコントリビューターとして追加され、プロジェクトへの貢献体制が強化されました 11。さらに、MicrosoftがMapLibreスポンサーシッププログラムに参加したことは、プロジェクトの財政的安定と開発リソースの増加を示唆する重要な出来事です 11。プロジェクトのロゴと帰属表示に関する提案（デフォルトでロゴを表示しない、帰属文字列に「MapLibre」とリンクを含めるなど）も議論され、プロジェクトのブランドガイドラインが明確化されました 10。これらの変更は、MapLibreプロジェクトの成熟度と、オープンソースコミュニティにおけるその影響力の増大を明確に示しており、これは将来的な開発の安定性と機能拡張の可能性を裏付けるものです。

7. MapLibre GL JS v5.x: グローブビューと最新の機能追加

MapLibre GL JS v5.xは、視覚的な革新とデータ処理能力の拡張に焦点を当てた最新のメジャーバージョンです。

没入型グローブレンダリングモードの導入

v5.0は、没入型グローブレンダリングモードを正式に導入しました 12。この機能により、マップを従来の平面表示だけでなく、地球儀のように表示することが可能になり、ユーザーにこれまで以上にリアルで魅力的な地図体験を提供します。グローブレンダリングモードの導入は、MapLibreが単なる実用的なマッピングツールから、より没入的で視覚的に魅力的な体験を提供するプラットフォームへと進化していることを示しており、ユーザーエンゲージメントを高める上で非常に重要です。

特筆すべきマイナーバージョンにおける変更点

v5.xのマイナーバージョンでは、グローブビューの改善と全体的な安定性向上に重点が置かれました 23。

• v5.6.1 (最新): カラーリリーフシェーダーにおけるtextureSize呼び出しの修正、projectFromLabelPlaneToClipSpaceにおけるY軸変換の修正、すべての例のアルファソート、locationOccludedOpacityが適用されなくなった場合のポップアップの不透明度リセットの保証など、主にバグ修正に焦点が当てられました 23。
• v5.6.0: setGlobalStateProperty()とgetGlobalState()がマップのパブリックAPIに追加され、グローブビューでのタイルカリングが改善されパフォーマンスと読み込み速度が向上しました。また、地形RGBタイルから等色相ティントをレンダリングするための新しいcolor-reliefレイヤータイプが追加されました 23。バグ修正としては、グローブビューでアンチメディアンを横断する
  queryRenderedFeaturesの境界ボックスの修正、無効なグリフ配置結果の処理の修正、ベクタータイルに対するrefreshTiles()の修正などが含まれます 23。
• v5.5.0: 追加のヒルシェードメソッド、マップのパブリックAPIへのrefreshTiles()の追加、権限が拒否されtrackUserLocationがオフの場合のジオロケートコントロールボタンの無効化といった機能改善が行われました 23。バグ修正には、グローブビューでのスクロール最小ズームの修正、ヒルシェードの外観変更の修正、ラスターおよびラスターDEMタイルに対するタイル有効期限ロジックの修正などが含まれます 23。
• v5.4.0: パブリックAPIにタイルLOD（Level of Detail）コントロールが追加されました 23。バグ修正としては、国際日付線を超える場合のグローブビューでの
  queryRenderedFeaturesの修正、グローブのunprojectが点を地平線にクランプするよう修正、グローブでのマーカードラッグ座標が経度で±360°ずれる問題の修正などが行われました 23。
• v5.3.x: GeoJSONソースにデータの境界を取得するためのgetBoundsが追加され、ボットがEventインスタンスを使用する際に発生するエラーを回避するためのMouseEventチェックが追加されました 23。MultiPolygonsとPointsの交差検出の修正、地形タイル上で画像が部分的にレンダリングされる問題の修正、Globe投影モードでの円レイヤーのヒットボックスの修正などがバグ修正として含まれます 23。
• v5.2.x: グローブ投影で位置が非表示になった場合に不透明度を設定できるようになり、frameAsyncとsendAsyncにおけるAbortControllerシグナルリスナーのメモリリークが修正されました 23。
• v5.1.x: グローブでのflyTo()使用時のパディング適用方法の修正、ベアリング範囲-180から180をサポートするためのURLハッシュ検証の修正、パディング設定時の可変ズームタイル計算の修正、誤って無視されていた日本語記号のレンダリング修正などが行われました 23。
• v5.0.1: 多くのスタイルで問題を引き起こしていたgeometry-typeで行われた変更が元に戻されました 23。

COG (Cloud Optimized GeoTIFF) サポート

v5.0では、データソースとして基本的なCOG（Cloud Optimized GeoTIFF）サポートが追加されました 12。これにより、PMTilesのラスターモードと同様に、大規模なラスタータイルデータを効率的に配信できるようになります。COGサポートは、MapLibreのデータ処理能力を大幅に拡張し、大規模な地理空間データの効率的な処理と配信を可能にします。

SDFスプライトとWeb UIフレームワークの基盤

SDF（Signed Distance Field）スプライトが別のAPIルート経由で生成可能になり、マップデータに基づいてスプライトの色を付けたり、より鮮明なスプライトを実現できるようになりました 12。これは、マップのカスタマイズ性と視覚的品質を高めるものです。また、Web UIフレームワークの基盤が築かれ、今後のUI開発に向けたビジョンが示されています 12。これらの機能は、将来的なカスタマイズ性と開発の柔軟性を高めるための先行投資であり、MapLibreが長期的なビジョンを持って開発されていることを示唆しています。

8. まとめと今後の展望

MapLibre GL JSは、Mapbox GL JSのライセンス変更という状況からオープンソースフォークとして誕生して以来、着実に進化を遂げてきました。バージョン1.xではMapbox GL JS 1.xとの互換性維持と初期のバグ修正に注力し、既存ユーザーの円滑な移行を支援しました。v2.xでは、TypeScriptへの全面移行と3D地形（Terrain3D）の導入により、Mapboxからの技術的独立を確立し、よりリッチな視覚表現の基盤を築きました。v3.xでは、WebGL2の本格採用と3Dレンダリングのさらなる強化、そして広範なパフォーマンス改善により、3Dマッピングの成熟を達成しました。v4.xでは、JavaScriptコールバックからPromisesへの移行によるAPIの近代化、UIコンポーネントの分離の検討など、開発者体験の向上とプロジェクトのアーキテクチャ強化が進められました。そしてv5.xでは、画期的なグローブビューの導入、COGサポート、SDFスプライトの強化など、視覚的革新とデータ処理能力の拡張を実現し、MapLibreの機能をさらに広げました。各メジャーバージョンは、パフォーマンスの向上、機能の拡張、開発者体験の改善という一貫したテーマを持って開発されてきたことが明らかです。

MapLibreプロジェクトは、Semantic Versioning (2.0.0) に従って開発されており 2、これによりバージョン間の変更の意図が明確に示され、開発者にとって予測可能なアップグレードパスが提供されています。プロジェクトはコミュニティ主導であり、バウンティプログラムや、MapTiler、Microsoftといった主要なスポンサーからの財政的支援を受けています 2。この持続可能なオープンソースモデルの成功は、Mapboxのライセンス変更という商業的圧力に直面した際に、コミュニティのレジリエンスと戦略的な意思決定がいかに重要であるかを示しています。企業からのスポンサーシップは、コミュニティの貢献と相まって、プロジェクトが長期的に安定したリソースを確保し、WebGL2の採用やグローブビューの導入といった野心的な目標を達成できるようになったことを示しています。これにより、MapLibreはオープンソースマッピングエコシステムにおける重要なプレーヤーとしての地位を確立し、今後も革新的な機能と安定したパフォーマンスを提供し続けることが期待されます。

9. 補足情報

MapLibre GL JSに関する詳細情報は、以下のリソースで確認できます。

• 公式ドキュメント: MapLibre GL JSの完全なドキュメントは、公式ウェブサイトで利用可能です 2。
• 貢献ガイドライン: MapLibre GL JSへの貢献に関するガイドラインは、GitHubリポジトリのCONTRIBUTING.mdで確認できます 2。
• コミュニティ連携: MapLibreプロジェクトは、OSMUSのSlackチャネルを通じてコミュニティとの連携を促進しています 2。

引用文献

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2. MapLibre GL JS – Interactive vector tile maps in the browser – GitHub, 8月 5, 2025にアクセス、 https://github.com/maplibre/maplibre-gl-js
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7. MapLibre GL JS v3 | MapLibre, 8月 5, 2025にアクセス、 https://maplibre.org/news/2023-05-23-maplibre-gl-js-v3/
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11. MapLibre Newsletter February 2024 | MapLibre, 8月 5, 2025にアクセス、 https://maplibre.org/news/2024-02-29-maplibre-newsletter-february-2024/
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