「博物館法の一部を改正する法律(令和4年法律第24号)の法的考察」を読んでみた。

出典

渡部 友一郎(2022),「博物館法の一部を改正する法律(令和4年法律第24号)の法的考察
―博物館の文化観光推進努力義務を新設した第3条第3項のソフトローとしての影響―」『観光研究』,34(1) ,p. 59-64

メモ(引用含む)

R4年に博物館法が改正された。様々な改正があったが、本論文では「文化観光推進努力義務の狙いを考察する」が目的だ

本法律の策定の背景には「文化観光振興法」がある。博物館の8割が歴史・美術博物館であることから「文化観光拠点」として博物館はふさわしい施設だと考えていたと考えられる

「立法課程」を知る上て最も基本的かつ重要な資料である、立案担当者資料を見ると下記のことがわかった。
文化観光拠点施設へ支援を行うことで、文化・観光・経済の好循環を形成することを目指している(下記の図

図2 文化観光推進法で目指す文化・観光・経済の好循環

この循環は博物館の基本的な事業成果の効果として結果的に現れるもの。博物館が事業を実施する際の観点として、努力義務を規定した。
博物館単体では十分に行うことができないため、機関や民間事業者との連携についても規定した。

一方、法解釈的には単なる「観点」として定めたと読めない。
また博物館の本来の業務から付随的自然的に文化観光の活動の推進が生まれるとも考えがたい。

つまり事業成果活用義務、連携協力義務、文化観光等の推進義務の3つにについて定められたものとして解するのが適切である。

観光の多様化により文化観光の役割が増す中で、観光の産業強化は避けられないだろう。

感想、コメント

法学的な論文を読むの初めてだったので、読むのに苦労した上、解釈できたのか不安である。
一方、気になっていたことをドンピシャで解説してくれた論文であり、非常に良い論文だと思う。

私自身も筆者と同様に、「博物館の本来の業務から付随的自然的に文化観光の活動の推進が生まれるとも考えがたい」と考えている。
もちろん、本来の業務は必要であるが、それだけで観光につながるとは思えない。その成果を適切に伝える必要がある。そのためには伝えるための取り組み(文化観光)をおこなう必要があるだろう。
今の博物館にはそんな体力が残っていないと思われるが、持続可能な運営のためには伝えるための取り組み(文化観光)についても取り組む必要があるだろう。
そのためには、ハード面だけでなく、デザインや接客、見せ方、戦略などソフト面でも支援する必要があるだろう。

参考

図4 文化観光拠点施設の機能強化に関する5つの事業